康耀堂美術館では、2011年度より茅野市教育委員会、茅野市中央公民館、尖石縄文考古館と連携し、京都造形
芸術大学及び康耀堂美術館の専門性を取りいれ、茅野市が掲げる「縄文プロジェクト構想(国宝の土器や土偶を
作りだした縄文の高い精神性を教育へ反映させる)」を軸に、縄文文化と芸術への関心を高めてもらうことを目的
とし、茅野市内の児童生徒・教育関係者・保護者を対象に「縄文と今をArtでつなぐ体験授業(=縄文アート)」
を毎年開催しています。

※2020度は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりましたが、2021年度は三密を避け、しっかりと感染
 防止対策を行った上で7月25日(日)に開催しました。

2021年度の縄文アート −縄文と今をArtでつなぐ体験授業『縄文土器巾着をつくろう!』

■開催日と場所/7月25日(日) 尖石縄文考古館、青少年自然の森

■授業内容/午前:「鑑賞のコツ」「土器のみかた」
      午後:ワークショップ「縄文土器巾着をつくろう!」

■参加者/13名(茅野市内小学校2年生から6年生)


○「鑑賞のコツ」
 講師/康耀堂美術館学芸員 両角綾佳さん

 

 美術館には貴重な美術品がたくさん展示されていますが、みなさんは一つの作品をみるのにどのくらい時間を
 をかけていますか?鑑賞するペースは人それぞれ。「こう観なければいけない」というルールはないですし、
 自分の好きなように、自由に観ていただければいいのですが、「鑑賞のコツ」を取り入れることで、鑑賞する
 ことが楽しくなって、自然と一つの美術品を深く観ることにつながっていくと思います。

 今回使用した作品画像:ピカソ《泣く女》
 まずは作品名を伏せた状態で、両角さんと参加者の対話がはじまりました。

   

 両角さん:「ここには何が描かれているかな?」
 参加者A:「女の人」
 両角さん:「どうしてそう思ったのかな?」
 参加者A:「髪の毛が長くて、帽子を被ってるから。」
 両角さん:「そうだね。今の時代は髪が長い男の人もいるけど、これは女の人みたいだね。」

 両角さん:「じゃあ、この女の人は何をしているところだと思う?」
 参加者B:「泣いている。」
 両角さん:「何でそう思うの?」
 参加者B:「目から涙が出てるから。」
 両角さん:「ほんとだ、これ(涙が描かれている部分を指さして)が涙だね。」

 色々な意見が出そろったところで、いよいよ作品名が明らかにされました。

 対話の内容からもお分かりいただけると思いますが、美術品を深く観ることは決して難しいことではなく、
 絵画であれば「何が描かれているのか?」、立体物であれば「どうしてこのような形なのか?」など、思い
 を巡らせて追求していくことこそ、「鑑賞のコツ」なのだと思います。

 また、ちょっと高度な技?(笑)になるかもしれませんが、例えば風景画では自分が「絵の中に入ってみる」
 という観かたがあります。ある美術関係の本を読んでいたときに書かれていたことなのですが、やってみると
 面白いと思います。挑戦するときは五感をフル回転して入り込んでみてくださいね!そこから匂いや風・気温
 などを感じることができるかもしれません。

 あとは、鑑賞したときの感想や気付き(どうしてそう思ったのか?どうしてそう感じたのか?など)は、具体
 的に記録しておくことをおすすめします。いつか、また同じ作品と再会する日が来るかもしれません。それは
 すぐにかもしれないし、ずーっと先のことかもしれない。人の心や気持ちは日々変化しています。観る時期や
 自分の年齢、一人で鑑賞しているのか?誰かと一緒に鑑賞しているのか?など。鑑賞時の条件によって、感想
 や気付きは違っていることでしょう。その違いを比べてみるのも、きっと楽しい時間になるはずです。
 ぜひ、両角さんが教えてくれた「鑑賞のコツ」を実践してみてくださいね。


○「土器のみかた」
 講師/尖石縄文考古館 守矢昌文館長

 「土器のみかた」を教えてくれたのは、尖石縄文考古館の守矢昌文館長。
 今年も本物の土器に触らせていただけるということで、「土器に触るための約束事」について、守矢館長自ら
 実践して教えてくれました。腕時計や指輪などの装飾品は全て外して、自分の大切な宝物を扱うのと同じよう
 に両手で優しく包み込むように持ちます。参加者は取扱いに注意しながら、一人ひとり土器に触らせてもらい
 ました。本物の土器に触れるなんて、なかなかできないこと。とても貴重な体験なので、大人になってもこの
 日の記憶が残っていることでしょう。

  

 両角さんと守矢館長の鑑賞のコツが終わると、いよいよ展示作品の鑑賞です。
 みんな真剣に鑑賞しながら、気になる土器のことをワークシートに細かくメモ。午後のワークショップでは、
 自分のお気に入り土器をモチーフにした土器巾着を作ります。みんなのお気に入り土器はどれになるのかな?
 また、今年から康耀堂美術館と本学大学院の連携もはじまり、大学院生11名が参加してくれましたが、みんな
 館長のお話に興味深々の様子でした。

  

午前中の授業はここまで。

昼食が終わると、午後のワークショップ。


○ワークショップ「縄文土器巾着をつくろう!」
 講師/京都芸術大学 美術工芸学科非常勤講師 染谷聡先生
 お手伝い/京都芸術大学 大学院生11名

 縄文土器には不思議な模様がたくさん描かれています。その模様はどうやって描かれたのでしょうか。縄文
 人と同じ方法で、巾着袋に色々な模様を描いてみましょう。縄文人の気持ちになって、自分だけの縄文型の
 巾着袋をつくりましょう!

 このワークショップでは、午前中の土器鑑賞で気づいたり・発見したりしたことを活かして、縄文土器巾着
 を制作しました。あらかじめ用意された巾着を使いましたが、自分のお気に入り土器の形を下書きしたら、
 下書きどおりにハサミで切り取り。模様は紙管に巻きつけたロープに色をつけて、巾着の上でコロコロコロ。

 今年も素敵な作品が完成しました!!!

  

  


○「過去の縄文アートについて」
 2017年の授業風景⇒ 『土器、ドキドキ!縄文探検隊!!』
 2018年の授業風景⇒ 『縄文国の国旗をつくろう!』
 2019年の授業風景⇒ 『わたしの祈願文様を染めよう!』
 ※2020年縄文アート体験授業は中止


○「縄文アート作品展について」
 縄文アートで制作した作品は、下記日程で巡回展示を行います。
 ぜひ、ご家族やお友達と一緒にお出掛けください。

 ■康耀堂美術館
  展示期間:8/1(日)〜8/15(日)まで ※終了しました

 ■茅野市中央公館
  展示期間:9/18(土)〜9/23(木・祝)まで ※終了しました

 ※本作品展は無料でご覧いただけます。ただし、康耀堂美術館での夏のコレクション展『星は語る』を
  ご覧いただく場合は、別途入館料が必要です。

  


○「次年度の体験授業開催について」
 体験授業は、来年も開催する予定です。
 茅野市教育委員会、茅野市中央公民館、尖石縄文考古館との連携を深め、参加者のみなさんと一緒に、
 楽しみながら学べる授業を企画していきます。授業の様子は、当館ホームページやブログでもお知らせ
 します。


ホームに戻る


≪禁無断転載・複写≫ 当館ホームページ上に表示する全ての著作物(文章、資料、画像)などに係る著作権、その他の権利は
当館及び情報提供者に帰属します。
© 2009 Kyoto University of Art and Design